化物語 アニメ 8話と原作の比較

アニメ「化物語」の各シーンが原作(小説)ではどう書かれているかを紹介しています。

アニメ 化物語 8話




小説 化物語(上) 400ページ

戦場ヶ原のそばにいたいのは――阿良々木暦が憎かったから。
そう、裏を読む。そう、裏を見る。
無意識の願望を、見抜く。見透かす――悪魔。
身を引いた自分に後悔はなくとも――その位置に誰かが来ることを、
許せなかった。誰かかその位置に来るなら、自分でもいいはずなのに――
だったら、私でもいいはずじやないか。
レイニー・デヴィル。
古くからヨーロッパに伝わる悪魔。多く、雨合羽を着た猿の姿で描かれる。
その意味では、一応、その左手のことを攘の手と言っても正解なのだろうけれど――
とにかく、一つ目も二つ目も、願い自体は、無意識に、
明に暗に、神原が望んだことだったのだ。
自分をからかう同級生を。そして僕を。
小学生のときの同級生が怪我程度で済んで、僕か殺されかけたのは、
つまり、神原の想いの差だったのか……ネガティヴな気持ちの量の差だったのか。
神原の運動神経の成長云々も、勿論要因遠因としてはあるのだろうけれど、
しかし、それ以上の精神的なものも、あったということだ。
まあ、しかし、忍野の言う通り。僕の考えが足りなかったのかもしれない。
本当に神原が、レイニー・デヴィルに『戦場ヶ原のそばにいたい』と
願ったのなら、それで神原が、僕の身の安全を気にするのは、
おかしい――小学生のときのエピソードを聞けば、
暴力的な左手か阿良々木暦を排除しようとするのはわかる。
けれど、どうだろう、神原の立場から、
それか確実に起こると、どうしてわかるのだろう?
左手かどんな風に願いを叶えるのか、どんな風に意に添わない形で
願いを叶えるのかなんて、本当のところ、わかるわけがないのに。



小説 化物語(上) 408ページ~409ページ

「あっそ。まあ、それが阿良々木くんの決めたことなら、それでいいんだけれどね。
全然構わないさ、僕の知ったことじゃない。じゃあ、まあ、とりあえず阿良々木くん、
お嬢ちゃんに力、貸してあげなよ。言っとくけど、中に入ったら、
ことが終わるまで、もう出られないからね。
内側からは、絶対に、扉、かなくなっちゃうから。
逃げの選択肢は最初からないものと構えておくこと。
後には引けないって状況がどれほどのものか、春休みのことをよーく思い出して、
覚悟決めとかなくちゃ駄目だよ?……勿論、何があっても、
僕や忍ちゃんが助けに現れるなんてことはないから。
忘れないでね、この僕か常軌を逸した平和主義者にして機会を逸した人道主義者だってことを。
阿良々木くんがこの教室に入ったのを見届けたら、僕は四階へ寝に行くから、
後のことは知らないよ。阿良々木くんもお嬢ちゃんも、帰るときは、別に挨拶しなくていいからね。
その頃には忍ちゃんも眠っちゃってると思うし、勝手に帰って頂戴」
「……世話かけるな」
[いいよ]
忍野か壁から背を離し、扉を開けた。
躊躇せずヽ中に這入る。すぐに忍野は、扉を閉めた。



小説 化物語(上) 436ページ

「冗談じゃないわよ。薄っぺらい自己犠牲の精神なんて、これっぽっちもお呼びじゃないわ。
阿良々木くんが死んだら、私はどんな手を使ってでも神原を殺すに決まっているじゃない。
私、確かにそう言ったわよね?阿良々木くん、私を殺人事件の犯人にするつもり?」
……お見通し。全く、情の深い女だ。
うかうか死ぬこともできないってのか。一途なくらいに――歪んだ愛情。
「私が何より気に食わないのは、阿良々木くんが、たといそんな身体じゃなくとも、
同じ行為に身を投じていただろうということか。はっきりとわかってしまうことよ。
不死身の身体におんぶにだっこでこんな馬鹿なことをやっているのだったら、
どうぞお好きなようにという感じなのだけれど、阿良々木くんときたら当たり前みたいに、
流れのまにまにそんな有様になってしまって――もう、さっぱりね」
「……………」
「まあ、大きなお世話も余計なお節介もありかた迷惑も、阿良々木くんにされるなら、
そんなに悪くはないのかもしれないわ――」
戦場ヶ原は、最後まで僕に一瞥もくれないままに、倒れた姿勢のまま
起き上がろうとしない雨合羽に向かって、ずいっと一歩を、踏み出した。
雨合羽は、まるで戦場ヶ原に怯えているように、倒れた姿勢のままで、後ろに這いずる。
怯えているように……。
怯えているように……どうして?



小説 化物語(上) 440ページ

私は、と、しゃくりあげながら。彼女は、彼女の想いを囗にする。

「私は、戦場ヶ原先輩か、好きだ」

彼女の、彼女の願いを口にする。
「そう。私はそれほど好きじゃないわ」
いつも通りの口調で、直観的に、思ったまま。
戦場ヶ原は平坦にそう言った。
「それでも、そばにいてくれるのかしら」
いっぱい待たせて、ごめんなさいね。とても平坦に、そう言った。
……愚かしい。愚かしいこと、この上ない。
全く――かませ犬もいいところだった。
我ながら、そしていつもながら、あつらえたような三枚目を演じたものである。
見事なくらい、何の役にも立ってない。
ごめんなさいが言える、素直な子。
戦場ヶ原ひたぎが、どれだけ強欲な女なのかということくらい、
僕はとっくに知っていたはずなのに。戦場ヶ原ひたぎが、
どれだけ諦めの悪い女なのかということくらい、僕はとっくに知っていたはずなのに。
それが本当に大事なものだったなら。
戦場ヶ原が、諦めるわけがないのに。大きなお世話、余計なお節介。
ありがた迷惑。しかし、まあ……それでも、なんというか、
全くもってどいつもこいつも、本当に、ひねくれてるよなあ――
実際、裏表のある奴ばかりだ。表も裏も、メビウスの帯のように、表裏一体。
ならば解釈は愛の力でも、別にいいや。人から忘れられるっていうのは、結構凹むから。

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