化物語 アニメ 13話と原作の比較

アニメ「化物語」の各シーンが原作(小説)ではどう書かれているかを紹介しています。

アニメ 化物語 13話




小説 化物語(下) 254ページ

一本取られた感じだ。やはりこの小学生、天才肌なのか……?・
くそう、どこまでも底の見えない子供だ。
「しかし小学生かよく鵺なんて知ってるな」
「色々と勉強中です」
「あっそ」
「とにかく、ぼらら木さん」
「人を淡水汽水どちらにも生息する
出世魚みたいな名前で呼ぶな。僕の名前は阿良々木だ」
「失礼。噛みました」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「神はいた」
「どんな奇跡体験をっ!?」
恒例のやり取りも七回目ともなると、いい加減こなれてきちやって。
手順に一つの狂いもない。
「とにかく、阿良々木さん。いいですか、受験っていうのは大変なんですよ」
「わかってるよ、そんなこと」
「そうですか。わたしはわかってませんけど」
「だよなあ!」
したことあるはずないよなあ。
「それにしたって、重ね重ね、心配ですねえ。
老婆心かもしれませんか、阿良々木さんに、果たして願書が書けるのかどうか」
「そんな地点から心配されてるのか!? 恐るべし、少女の老婆心!」



小説 化物語(下) 265ページ

生徒の流れを逆走。
そのまま、自転車置き場へと取って返す。
「あら」
そこで、戦場ケ原ひたぎと出会った。予鈴寸前――ではあるが、
しかし彼女の場合は僕のように遅刻寸前というわけではない、
戦場ケ原は、いつでも、計ったように計算ずくで、
一切の無駄なく、この時間に登校してくるのだった。
昨日のことかあったから、突然顔を合わせて、
僕は気恥ずかしくてちょっと言葉に詰まったが、そこはさすがは戦場ヶ原ひたぎ、
まるっきり平坦な態度、全くの無表情で、
「何よ」と言った。
「阿良々木くん、どこかに行くの?」
「ちょっとそこまで」
「何をしに行くの?」
「人道支援」
「あらそう」取り澄ましたものだった。
さすかは戦場ヶ原ひたぎ。もう、僕のことはわかっているようだ。
これも以心伝心――なら、いいんだけれど。
「いいわ。行ってらっしゃい、阿良々木くん。本来ならばあり得ないことだけれど、
特別に情けをかけて、私が代返しておいてあげる」
「四十人ぽっちの高校の授業で代返なんて、何の意味もないと思うが……
て言うかお前が怒られて終わりなような気がするぞ」
「ちゃんと阿良々木くんの声色を使うから大丈夫よ、任せておいて。
私の声を担当している声優さんは優秀なのよ」



小説 化物語(下) 275ページ

「……一ヵ月くらい前――かな。
ん、でも、最初はそれほどでもなくって――でも、
一昨日と、昨日……両方、阿良々木くんの前でだったけれど、
本屋さんと、学校の正門のところで、あった頭痛は……実は、かなり酷かったの」
「言えよ。そのとき」
「ごめん。阿良々木くんに心配かけたくなかったし」
「……まあ、いいけどさ。じゃあ………
ゴールデンウイークが終わって以来、猫に関するエピソードってのはあるか?」
「猫に関するエピソード?」
「黒猫が目の前を横切ったとか、そういうレベルでいいんだけど」
「……………」
眼を閉じて、記憶を探る仕草をする羽川。
正直、そんなことが、思い出そうとして思い出せるものなのかどうか、
わからないが………まあ、あの戦場ケ原をして。
世界が違うと言わしめるような『本物』だからな……。
常識で計れば怪我をする。だからこそ彼女は――怪異に見舞われたのだ。
「五月二十七日、夜頃に聞いていたラジオ番組で、
ラジオネーム『大熊猫大好き』さんの葉書か読まれていたけれど、それが何か関係あると思う?」
「……いや、ないと思う」
すげえ。わかってたけど、すげえ。
「ちなみに葉書の内容はこうだったわ。
『漫画やアニメなんかでは気楽そうにもてはやされていますけれど、
メイドっていうのは、意外と大変な仕事なんですよ。
萌え萌え言っていればいいってものじゃないんです。
本当、休む暇なんて全然ないらしいですから。
この間、合コンで会ったときに聞いたから間違いありません』」
「いや、そこまで説明しなくていいから!」
「ところで、阿良々木くん、この葉書、
何が面白いんだと思う?私にはちょっとわからないんだけど」



小説 化物語(下) 278ページ

「羽川様。帽子を、こちらでお預かりします」
「阿良々木くん」
「はい」
「怒るよ」
「怒れよ」
羽川の剣幕にひるまずに、僕は言う。
「怒りたきやいくらでも怒ればいい。なんなら、嫌ってくれても構わないぜ。
僕にとってはお前との友情よりもお前に恩返しをすることの方がずっと大事だ」
「恩返しって……」
羽川の声が少し小さくなる。僕の言葉に気まずさを感じているかのようだ。
「何のことを言ってるのよ」
「春休みのことを言ってるんだ」
「あれは――でも、あんなの、やっぱり……それこそ、
阿良々木くんが、一人で勝手に、助かっただけ――なんでしょう?」
「違う。それでも忍野はそういうかもしれないけれど、
僕は、お前に助けられたと思っている。お前は、命の恩人だ」
僕は言った。やっと言えた、そんな感じだった。
そうだ。ちゃんとお礼が言えるのは――僕の方だ。
「その恩か返し切れるなんて思ってない。だけど、お前のために何かさせて欲しいんだ。
お前のためにできることは、僕は全部やるんだよ。
その結果だったら、怒られても賺われても、我慢できるさ」
「我慢ね」
羽川は――少しだけ、笑った。いや、泣いたのかもしれない。わからなかった。
「生意気なこと言うじゃない」
「そうか?」



小説 化物語(下) 293ページ

忍野は言う。倒れた羽川を、見下ろすようにして。
「どうもどうやら、阿良々木くんが既に事情聴取は終えていてくれたらしいからね――
阿良々木くんも心得てきたじゃないか。ツンデレちゃんや迷子ちゃん、
百合っ子ちゃんや照れ屋ちゃんとの経験も無駄じゃなかったって感じかな。
特に、一昨日の照れ屋ちゃんの件は、阿良々木くんにとっていいパンチだったみたいだね」
千石は照れ屋ちゃんになったのか。
あれは照れ屋なんてものじゃないと思うが……。
まあいいや、訂正を入れるほどのことじゃない。
今は、それより。
「それより、羽川だよ……何をしたんだ?」
「だからさ、阿良々木くんが心得てきたお陰で、
僕がすることはほとんどなかったからね。ちょっと手順を省略した」
「省略?」なんだそれ。そんなことができるのか?
「これはこれで外法なんだけれどね。時間がない――って言ったろ?
それに、この場合……阿良々木くんも十分にわかっていると思うけれど、
委貝長ちゃんに話を聞くよりは、本人に話を聞いた方が、いくらか于っ取り早い」
「……本人、か」
「委員長ちゃんは、突き詰めれば、
いくら記憶が戻ったところで憶えていないんだからね――話してもラチがあかんさ。
不意打ちで女の子を叩いちゃったのは、
そりゃ阿良々木くんが顔色を変えるのもわかるけれど、
今のは不意をつかないと意味のない作法だから、さ。堪忍してくれよ」
いやあ、この娘、全然油断しないから、精神の隙を探るのに苦労したよ――と、忍野は言った。


小説 化物語(下) 294ページ~295ページ

うつ伏せに倒れた羽川の、その、
普段は三つ編みに結われている長い髪が――変色していく。
変色。いや――退色か。純粋な黒から、白に近い銀へ。
すうぅーっと、生気か抜けていくように。
「………………」言葉もない。
忍野を訪ねる時点で、こうなることを、僕はある程度予測していて、
それなりに覚悟を決めていたつもりだったが――
しかしそれでも、こうも唐突に再会するとなると、動揺は隠せなかった。
全く、薄い。薄くて弱い。
羽川にとって必要なときに、絶対にそこにいると――ちゃんと誓ったはずなのに。
がばっと――彼女は、飛び起きた。
その勢いで、かぶっていた帽子が飛ぶ。飛んで――あらわになる。
前髪の揃った白い髪が。小さな頭から生えた白い猫耳か。
「にやははは――」
そして彼女は――
猫のように目を細め、猫のようににたりと笑う。
「また会えるとは驚いたにゃあ、人間――
懲りもせずに俺のご主人のおっぱいに欲情してやがったみたいで、
相変わらずお前は駄目駄目にや。食い殺されたいのかにゃん?」
「………………」
自分のギャラ設定とポジショニングを、
一つの台詞の中でとてもわかりやすく説明しながら――ブラック羽川は、再臨した。

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