化物語 アニメ 14話と原作の比較

アニメ「化物語」の各シーンが原作(小説)ではどう書かれているかを紹介しています。

アニメ 化物語 14話




小説 化物語(下) 322ページ

八九寺の証言によれば、昨日、
八九寺が国道沿いのミスタードーナツの辺りに金髪の子供を見たのが、
夕方五時頃――つまり、
そのときにはもう、それは失踪中の忍野忍だったということなのだろう。
子供の足だ、そう遠くまでいけるはずもない。
たかが一日-まして今の忍は伝説の吸血鬼でも何でもない、
ほとんどがただの子供である、体力という意味では、僕よりずっと下なのだ。
ただの子供――いや、僕がそばにいなければ、ただの子供以下のはずである。
わずかに残された能力もほとんどが制限されてしまう。
疲れもすれば、お腹も空く。……って、おい。
そうだよ、ミスタードーナツのそばを歩いていようがどうしようが、
お金を一円も持っていないんだ――じやあ、あいつ、お腹をすかしているのかよ。
この町の中1どこかで、一人で。
「……………………」
自転車で駆け回っている途中――正午過ぎくらいだったか、
道を歩いていた八九寺真宵と、ぶつかりそうになった。本日、二回目の遭遇だった。
偶然でしか会えない八九寺に一日の内に二回も会えた幸運を
噛み締めたいところだったが、そんな場合でもなかった。
大体、一度目もそうだし、この二度目の遭遇だって厳密には偶然とは言えない――
僕はとにかく闇雲に、町中を走り回っていたのだから、そりゃ、いつかは会う。
「何良々木さん」
「遂にただの誤植になってしまったか……」
「失礼。噛みました」
そんな挨拶を交わしてから、僕は八九寺に、
昨日忍を見かけたときのことを、もっと詳しく教えてくれるように頼んだ。
「そう言えば」と、八九寺は言った。
「どことなく、寂しそうに、見えました」


小説 化物語(下) 325ページ

「暦お兄ちゃん」
そういう千石の声は、弾んでいるように思えた。
面と向かわずに済む電話では、どうやら千石のテンションもまた、違うようだ。
この子は早く携帯電話を持った方がいいと思った。
「暦お兄ちゃん。早速撫子に電話してきてくれたの? ……嬉しい」
「ああ……昨日の今日で、悪いな。えっと……」
ううん、どこから説明したものか……。
八九寺のときとは違って、千石に対しては、一から説明しなくちゃいけないから……。
「……?どうしたの?暦お兄ちゃん」
「あ、いや……その」
「落ち着いて。何かあったの?」
歯切れの悪い僕に、心配そうな千石だった。
「何かあったって言うか――」
「と、とにかく。落ち着いて。落ち着いてよ、暦お兄ちゃん。
そ、そうだ、今から撫子か、面白い話をしてあげるから」
「…………………」
すげえことを言い出した。
面白い話をすると言ってから面白い話をしようとは、ものすごい自信だ……。
「えっとね、漫画やアニメなんかでは気楽そうにもてはやされてるけれど、
メイドつていうのは、意外と大変な仕事なんだよ」
「『大熊猫大好き』さんはお前かよ!」
どうりでわかりにくかったわけだ!
お前絶対合コンなんか参加したことないだろ!
葉書の中では別の自分になってんじゃねえ……。
「お、落ち着いた?暦お兄ちゃん」
「おお……一周して、なんか落ち着いちゃったよ」
最初から落ち着いてなかったわけでもないのだが。でもまあ、言い方を選んでも仕方ない。
「それで?撫子に用事があったんでしょう?」
「うん……千石。頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと……何?」
「忍を探して欲しい」
僕は、結局、単刀直入にそう言った。



小説 化物語(下) 327ページ~328ページ

「神原駿河だ」
相変わらずの、フルネームでの名乗りだった。
どうやら、杞憂だったようだ。
「神原駿河。得意技はBダッシュだ」
「……………」
本人的にはそうなんだ。宅急動でも縮地法でもなく。
まあ、これに対して嘘をつけとは言えないな。
「神原駿河。職業は阿良々木先輩のエロ奴隷だ」
「それに対しては断固嘘をつけと言うぞ!」
「ん。その声と突っ込みは阿良々木先輩だな」
「僕だとわからないままにそんなとんでもねえこと言ったのかてめえは!」
「エロ奴隷ではお気に召さなかったか?まあ、確かに私も。最初はもっと私にふさわしい、
もっと別の肩書きを考えていたのだが、ちょっと過激だったので自主規制したのだ」
「お前が自主規制するような肩書きなんて、想像するだけで恐ろしいよ!」
ていうか。早くアドレス帳の機能を使えるようになれ。
「神原。今、学校か?」
「いや、もう下校している」
「あれ?そうなのか?文化祭の準備は?」
「今日は当番ではないのだ」
「そっか。当番制なのか……うまく統制のとれたクラスなんだな。羨ましいよ」
なるほど。学校にいなきや、電源も何もないな。
「えっと、神原、じゃあ、今、家ってことか?」
「いや、それも違う。どうした、阿良々木先輩にしては珍しい、二度も予想を外すとは。
鬼の霍乱とはこのことだ。阿良々木先輩、私は今近所のスーパーのゲームコーナーで、
オシャレ魔女ラブandベリーに興じているところだ」
「予想できるか、そんなもん!」
常に予想を裏切りやがって!少しは思った通りの動きをしてくれよ!



小説 化物語(下) 337ページ

そして、最後の一人。忍を直接知る、最後の一人――
戦場ヶ原ひたぎに、僕は電話を掛けた。
呼び出し音がやけに長かった――
二十秒くらいは待ったのではないだろうか。
このまま留守番電話サービスに転送されるのではないかと
危ぶんだ矢先、ようやく繋がったようだった。
「行かないわよ」
「………………」
一言目で断られた。エスパーかこいつは。しかも、断るんだ……。
「………えらく電話に出るまでに時間が掛かってたみたいだけど、何かあったのか?」
「いえ?別に?電話に出るのが面倒臭かったから発信者も確認せずに
ポケットに入れたまま放っておいたのだけれど、
あんまりしつこいから諦めて発信者を確認したら阿良々木くんだったから、
じゃあやっぱり出なくてもいいかと電源ボタンを押して
呼び出し音を切ろうとしたら間違って通話ボタンを押しちやったので、
仕方なく出たのよ。ところで何か用かしら?」
「そんな奴に用なんかあるか!」
酷い奴だ。電話越しでも全く衰えを見せない。
「さておき、戦場ヶ原――話、聞いてくれよ」
「嫌よ。それよりも私の話を聞きなさい。先日、
友達と二人でレンタルビデオ店に行ったのだけれど」
「『林檎をむいて歩こう』さんはお前かよ!
そしてここ数年友達が一人もいなかったお前がそんな風な
『友達と仲良し』的エピソードをでっち上げてふつおたの
コーナーに送ったんだと思うと面白かったはずの葉書が悲しく思えてくるよ!」



小説 化物語(下) 349ページ

神原は言動がエロいか、羽川は身体がエロい……。
しかも猫耳だし。これで髪が黒かったらと思うと、ぞっとする。
種の存続という観点から見れば外見上の
セックスアピールは絶対的に必要不可欠なものだが、
しかし、果たしてそれって、ここまで過剰に必要なものなのだろうか。
「どうしたにゃん?」
「あ、ああ――えっと」
まあ、ゴールデンウィークのときは、こいつ、
下着姿で暴れてたんだからなあ……それに比べれば、いくらかマシつてものか。
どこまで記憶が戻ったところで、その記憶だけは、
羽川の脳内から永遠に削除されておくべきだろう。
「………えーっと、猫、僕が今から言う文章を復唱しろ。
斜め七十七度の並びで泣く泣くいななくナナハン七台難なく並べて長眺め」
 「にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどの
にゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはん
にゃにゃだいにゃんにゃくにゃらべてにゃかにやかめ」
「かぁーわぁーいーいー!」
猫言語に萌えることで、縄跳びに代えた。我ながら天才的な機転である。
じゃなくて。
「何をしに来たって、訊こうとしたんだ」
「何をしに来たとは、ご挨拶だにゃ」
ブラック羽川は茶化すような口調で言う。
「そりゃもう、人間を手伝ってやろうと思って、来たに決まってるにゃん」
「手伝い――に?」
「誤解するにゃよ、人間――俺はもう、
お前と戦おうという気はにゃいんにゃ。さっきもそう言ったはずにゃよ?」



小説 化物語(下) 368ページ

「いやにゃあ、人間。俺のご主人」
ブラック羽川は若干、歯切れ悪そうに言った。
「お前のことが、好きにゃんだにゃん」
「……あ?」
「だから、お前かご主人と恋仲ににゃってくれりやあ、
俺は引っ込むことができると思うんだが――にゃ?どうした?」
「………いや」
僕は歩みを停めた。というか――思考も停まった。なんだそりゃ?
「それはどういう冗談だ?僕だって全てのボケに
突っ込めるってわけじゃないんだぞ……つうか、冗談だとしても、
悪質過ぎるぞ。この世にはついていい嘘とついて駄目な嘘が――」
「馬鹿だにやあ、人間。俺に嘘をつけるような頭があると思うのか?」
「………………」
ねえよなあ。
つくとしたらもっとマシな嘘をつく、というお決まりの台詞は、
正直言ってあまり好きじゃないのだが
(こちらがそう思うことを見込んでつかれる嘘というのもあるだろう)、
この場合、そもそも嘘をつく能力が障り猫には備わっていない。
嘘をついたことがない――と、羽川は言っていたけれど、それとは真逆の意味である。
障り猫に嘘はつけない。だとすれば。
[で、でも……猫、そりゃ、嘘じゃないとするんなら、
お前の勘違いだよ。そんなことが、あるわけかない」

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